意義
システム監査基準より
目的
システム監査基準より
情報システムにまつわるリスクに対するコントロールの整備・運用状況を評価し、改善につなげることによって、ITガバナンスの実現に寄与するために実施する
次の4項目が適切にコントロールされていることを総合的に点検・評価する
特徴
システム管理基準による定義
企業が適切に情報システム戦略を策定し、その戦略を実施する能力
企業は経営戦略を策定し、経営戦略に沿って情報システムを策定し、情報システム戦略に基づいて、情報システムの企画、開発、運用、保守を実施し管理する能力
企業に求められるもの
企業が競争優位性を構築するために、IT戦略の策定・実行をガイドし、あるべき方向へ導く組織能力
組織活動の目的を達成するために行う、業務とシステムの全体最適化手法
ITが経営目的の達成のために有効に機能するようにコントロールすること
企業が適切に情報システム戦略を策定し、その戦略を実現する能力
経営陣が採用することが望ましい原則
責任
戦略
取得
パフォーマンス
適合
人間行動
情報システムの特徴とコントロール
特徴
デメリット
情報システムにまつわるコントロールの目的
コントロールの機能
予防牽制機能
誤謬適示機能
修正回復機能
例
信頼性のコントロール
安全性のコントロール
効率性のコントロール
経営目的とその適合性の観点からのコントロール
システム稼働状況の効率性の観点からのコントロール
企業活動に対するコントロール
外部統制
内部統制
企業内で自ら行うコントロール
内部牽制制度
内部監査制度
保証型監査
コントロールが適切に機能していることを保証する監査
監査対象たる情報システムにまつわるリスクに対するコントロールが、監査を実施した限りにおいて適切である旨を監査意見として表明する形態の監査
監査手続きを実施した限りにおいて、監査対象の情報セキュリティに関するマネジメントやコントロールが適切であることを保証する監査
システム監査を保証型で行う目的
助言型監査
監査対象から独立的かつ客観的立場のシステム監査の専門家として情報システムを総合的に点検及び評価し、組織体の長に助言及び勧告するとともにフォローアップする
監査対象から独立かつ専門的な立場から情報システムのコントロールの整備、運用を検証又は評価し、保証又は助言を行う
情報システムが企業活動に対して健全に機能しているかどうかを監査することによって、情報システム部門にアドバイスを与える
システム監査人は、システム管理者に対して監査の実施に協力するよう要請できる
監査人の選定にあたっての留意点
公認会計士が任意の業務としてシステム監査を実施する場合がある
システム監査人は監査報告書に記載した監査意見に対して責任を負う
監査において発見した問題に対するシステム監査人の責任
独立性
外観上の独立性
精神上の独立性
システム監査人の独立性が保たれている状況
情報システムの運用状況を監査する場合、監査人として適切な立場の者
経営者が社内のシステム監査人の外観上の独立性を担保するために講じる措置
情報システム部が開発し、経理部が運用している会計システムの運用状況を監査するシステム監査チームの体制
独立性の観点から問題となるもの
独立性の観点から問題とならない
適格性
公正不偏な態度
客観的な立場で公正な判断を行う精神的な態度
正当な注意義務、守秘義務
監査に関する知識や能力
高い倫理観と専門的な知識・技能を持っていること
必要な知識
実務経験
情報システムのガバナンス
情報システムのマネジメント
情報システムのコントロール
システム監査の対象部門、対象業務は、事前調査によってリスクの高い部門や業務を見極めて選ぶ
リスクアセスメントに基づく監査対象の選定
システム監査の対象
統制
外部統制
内部統制
情報資源
内部統制
全般統制
業務処理統制
以下の観点からシステム監査が必要である
情報システムが監査が可能であること
処理の正当性やコントロールの有効性、内部統制を効果的に監査できるように情報システムが設計・運用されていること
監査の実施が可能であるために必要な性質
運用環境を含めた監査対象システムの入力(事象の発生)から、れに対する作用、出力(結果)に至る過程を双方向で追跡できる一連の仕組みと記録
処理過程をすべて記録・保存しておくことは経済性・効率性を損なう可能性があるので、必要十分な監査証跡を決定し、確保することが大切である
役割
監査証跡の例
イントラネットシステム
システム運用業務(オペレーション)
信頼性のコントロール
安全性のコントロール
効率性のコントロール
留意点
不正アクセスやサービス妨害行為など、情報システムに関する犯罪や法的紛争・訴訟が生じた際に、原因究明や操作に必要な電磁的記録の証拠保全及び調査・分析を行うとともに、電磁的記録の改ざん・毀損等についての分析・情報収集等を行う一連の科学的調査手法・技術の総称
証拠保全技術
証拠収取技術
証拠分析技術
内部監査とシステム監査の関係
内部監査として実施したシステム監査で、問題点を検出後、改善勧告を行うまでの間に監査人が考慮すべき事項
監査の対象となるプロセスや領域の状況、重要性、前回までの監査結果などを考慮し、監査プログラムを策定しなければならない
監査の基準、範囲、頻度、方法を定義しなければならない
監査員の選定と監査の実施においては、監査プロセスの客観性と公平性を確実にしなければならない
一般にはプロジェクトから独立した所属組織の監査部署(品質保証部門やPMOなど)が実施する
監査の計画や実施、及び結果報告と記録維持に関する責任と要求事項を、文書化した手順の中で定義しなければならない
監査対象の領域に責任を持つ管理者は、発見された不適合やその原因が遅滞なく除去されるようにしなければならない
監査のフォローアップには、採った処置の検証及び検証結果の報告を含めなければならない
体系、目的、時期
監査計画の体系
監査計画
期間計画
中長期計画
年度計画
個別計画
監査計画策定の目的
システム監査を効率的に実施し、かつシステム監査の効果を高めること
監査目的の明確化
監査業務の効率化
システム監査技術者の育成
監査計画の必要性
監査目的の明確化
監査手順書(監査手続き書)
基本計画書
監査リスクモデル
監査人が、監査リスクを一定水準以下に抑えることを目標に監査計画を立てるリスクアプローチ
固有リスクと統制リスクを評価し、その高低に応じて発見リスクの水準を決める
監査リスク=固有リスク × 統制リスク × 発見リスク
リスクアプローチに基づく監査
監査時期の設定
一過性の監査
定期的に実施する監査
継続して実施する監査
中長期計画書
中長期経営計画やシステム設計書に対応して、3年から5年単位で作成する
中長期で検討する必要があるシステム監査の基本方針やシステム監査技術者育成の基本方針を決める
中長期計画書の役割
中長期計画書の必要性
中長期計画書の項目
年度計画書
システム監査部門の年間の活動方針、活動内容、スケジュールなどを示したもの
役割
必要な内容
システム監査業務の明確化
個人スケジュールの明示
外部専門家の活用
予算要求の基礎
立案上の勘案事項
記載項目
個別計画書
役割
必要性
記載内容
監査目的
監査対象
監査範囲
監査目標
監査手続
監査時期及び監査日程
監査責任者及び業務分担
被監査部門責任者及び被監査部門担当者
他監査との連携及び調整
報告時期
監査コスト
立案上の留意点
妥当性の確保
システム監査実施の目的
システム監査は監査証拠を収集するために実施する
システム監査基準によるシステム監査の実施目的
システム監査実施上のリスク
監査証拠
監査意見を立証する事実
種類
物理的証拠
文書的証拠
口頭的証拠
状況的証拠
入手方法
留意点
必要不可欠性
経済性
証拠能力の十分性
監査意見を立証するために必要な事実
監査人が監査手続きを実施して収集した資料を監査人の判断に基づいて評価した結果
必要に応じて被監査部門から入手した証拠資料を添付する
被監査部門以外の第三者から入手した文書は、被監査部門から入手した同種の文書よりも監査証拠としての証明力が強い
監査人が収集又は作成する資料であり、監査報告書に記載する監査意見や指摘事項は、その資料によって裏付けられていなければならない
現場調査では、監査人が見た実体と被監査部門からの説明を総合的に判断して、監査証拠とする
システム監査基準(平成30年)における"十分かつ適切な監査証拠"を説明したもの
種類
証拠能力(1:強→4:弱)
監査証拠となるもの
監査証拠とならないもの
監査証拠の入手
適切ではないもの
適切なもの
システム監査の実施手順
実施準備
個別計画書の内容を確認する
システム監査は個別計画に基づいて行われるので、実施前に個別計画書の内容をもう一度確認しておく必要がある
確認内容
被監査部門に対する事前通知
システム監査を円滑に実施するためには、被監査部門の協力が不可欠であるため、被監査部門に事前連絡をするのが原則
場合によっては事前説明会を開催にした方がよい場合もある
連絡内容
監査目的
スケジュール
被監査部門に対する協力要請、準備を必要とする資料など
抜き打ち的な検査
予備調査
目的
実施手順
監査対象の現状分析
現実の状態とあるべき状態の間の問題点の検討
計画した本調査の見直し
実施方法
関連文書・資料類のレビュー
チェックリストに対する回答
留意点
目標レベルの明確化(コントロールのレベル)
潜在的問題点の存在
監査手続の詳細化、具体化
予備調査で行う作業
監査対象の実態把握
『システム監査基準』の定める予備調査
アンケート調査を行い、監査対象に対する被監査部門の管理者及び担当者のリスクの認識についての情報を収集する
不正アクセス防止に関する取組状況を監査する場合、予備調査において、システム設計書によって、アクセスコントロール機能の内容を把握する
監査対象に対する被監査部門の管理者及び担当者のリスクの認識について、アンケート調査によって情報を収集する
被監査部門から事前に入手した資料を閲覧し、監査対象の実態を明確に把握する
監査対象先の事務手続きやマニュアルなどを通じて、業務内容、業務分掌、体制などを把握する
システム監査において実施される"試査"
監査手続
監査項目について、十分かつ適切な根拠を入手するための手続
どのように監査を行うかを示したもの
三つの側面
コントロールの評価
監査手続はコントロールの妥当性を点検・評価するために行う
妥当性の判断基準
準拠性テスト
実証性テスト
適用範囲による監査手続きの分類
精査
試査
監査対象項目の一部に対して監査手続を適用すること
統計的サンプリング
統計学の手法を利用したサンプリング
例
経験的サンプリング
今までの経験をベースとしたサンプリング
例
監査手続を選択し、適用する際の留意点
適時性
秩序性
経済性
監査手続書
予備調査の結果、必要があれば個別監査計画の監査手続きを修正する
個別の監査計画で述べられた監査手続きを実施できるレベルまで詳細にした監査手続書を作成する
監査手続書を作成することにより、監査目的に合わせた合理的な証拠の入手がより確実になる
監査手続書は監査の進捗管理の有効な手段として使用することもできる
役割
各システム監査人の行動を明確にするとともに、次回システム監査の参考資料としての役割ももつ
各システム監査人の行動の明確化
次回システム監査での参考資料
記載項目
監査計画の段階で記述する項目
監査の遂行中に記述する項目
監査技法
基本的なシステム監査技法
ヒアリング
チェックリスト法
ドキュメントレビュー法
突合法、照合法
現地調査法
実査
立会
インタビュー法
被監査部門の管理者や担当者に直接質問を行って実態を確認する
インタビューで監査対象部門から得た情報を裏付けるための文書や記録を入手するよう努める
監査対象の実体を確かめたり、特定の事実や監査意見を立証するために、システム監査人が、直接、関係者に口頭で問い合わせ、回答を入手する方法
回答の解釈に恣意性が入り込まないように、正確にインタビューを記録する
正確で有効なインタビュー結果を得るための方法
統計的サンプリング法
サンプルの抽出に無作為抽出法を用い、サンプルの監査結果に基づく母集団に関する結論を出すにあたって、確率論の考え方を用いる
コントロールが有効であると判断するために必要なサンプル件数を事前に決めることができる
許容誤謬率
許容逸脱率
サンプリングリスク
母集団
アンケート
ウォークスルー法
コンピュータ支援監査技法(CAAT;Computer Assisted Auditing Technique)
コンピュータを利用して行うシステム監査技法
主な機能 | 主な機能 | 主な機能 | 主な機能 | 主な機能 | 主な機能 | |
---|---|---|---|---|---|---|
技法 | システムのテスト | 稼働中オンラインシステムのテスト | プログラムロジックの分析 | プログラムの検証 | データの抽出 | 稼働中オンラインシステムからのデータ抽出 |
テストデータ法 | ○ | |||||
汎用監査ソフトウェア法 | ○ | |||||
組込み監査モジュール法 | ○ | ○ | ||||
ITF法 | ○ | ○ | ||||
並行シミュレーション法 | ○ | ○ | ||||
スナップショット法 | ○ | |||||
トレーシング法 | ○ | |||||
コード比較法 | ○ |
テストデータ法
汎用監査ソフトウェア法(監査プログラム法)
組込み監査モジュール法
ITF法(Integrated Test Facility)
並行シミュレーション法
スナップショット法
トレーシング法
コード比較法
監査目的によっては、ユーティリティプログラム、アクセス管理用ソフトウェア、ジョブ会計機能などを活用する場合がある
本調査
本調査の作業手順は、現状の確認、監査証拠の入手、証拠能力の評価の順に行う
質問書
ヒアリング
ヒアリングの結果、問題と思われる事項を発見した場合は、その裏づけとなる記録の入手や現場確認を行う
ヒアリングに関するシステム監査人の行為
監査目的に照らして監査対象の調査、分析、検討を行うこと
監査手続書に即して、必要な監査技法を監査対象に適用していく
実施手順
実施方法
留意点
評価・結論
本調査の結果に基づいて評価・結論を検討する
監査チェックリストの内容を検討して、問題として指摘する事項、評価できる項目に区分けして結論付ける
評価は監査証拠に基づいて公平な判断基準に則って行う
監査依頼者が監査報告に基づく改善指示を行えるように、システム監査人は監査結果を監査依頼者に報告する
システム監査チームが監査結果の評価を行ったとき、一部の項目について、調査不足から監査人の意見が分かれた場合の監査チームの対応
内部監査として実施したシステム監査で、問題点を検出後、改善勧告を行うまでの間に監査人が考慮すべき事項
調査結果を踏まえて、監査対象業務の実態が監査目的に照らし、妥当であるかどうかを判断して、その結果を監査報告書として取りまとめる
実施手順
留意点
監査証拠が不足している場合には、それを入手するための追加的な監査手続きを実施する
最終的な監査報告書は、システム監査部門責任者の承認が必要
改善の時期を逸しないように、調査が完了したら、速やかに監査報告会を開催できるようにしなければならない
被監査部門などからの異論の取り扱い
監査調書
監査調書の役割として、監査実施内容の客観性を確保し、監査の結論を支える合理的な根拠とすることなどが挙げられる
システム監査人が行った監査手続きの実施記録であり、監査意見表明の根拠となるべき監査証拠、その他関連資料などをまとめたもの
必要に応じて被監査部門から入手した証拠資料を添付して保管する
監査業務の全過程において、監査人が収集及び作成した資料
監査人が行った監査手続の実施記録であり、監査意見の根拠となる
システム監査基準(令和5年)が規定している監査調書の説明
システム監査の実施内容を記録した資料
作成の留意点
監査調書に対する不適切な扱い
実施した監査手続の結果とその関連資料をまとめたものであり、監査結果の記録であると同時に監査意見の裏付け証拠となる
文書として残されている監査調書のみが監査証拠となる点に留意する
必要性
記載項目
基本要件
監査担当者の意見
レビューの状況
留意点
監査業務の管理
システム監査業務も、一つのプロジェクトとして捉えることができるので、その実施に関しては、適切な管理が必要となる
進捗管理
品質管理
システム監査結果の数値による評価
監査項目ごとに評価基準を設け、その乖離度を数値化し、総合評価は加重平均で行う
計画の品質管理
監査手続書のレビューが中心となる
チェックポイント
実施内容の品質管理
おもに監査調書をレビューすることによって行う
チェックポイント
監査業務の改善
計画の品質管理
監査手続書のレビュー
実施内容の品質管理
監査調書のレビュー
システム監査報告の意義
目的
監査報告書の体系
システム監査報告書(個別監査報告書)
年次監査報告書
役割
責任の所在
システム監査人が負う責任
システム監査の依頼者が負う責任
システム監査報告書
監査の結果を権限者に報告する文書であり、システム監査人が問題ありと判断した事項は、指摘事項として全て記載する
システム監査報告書に記載された改善勧告に対して、被監査部門から提出された改善計画を経営者がITガバナンスの観点から評価する際の方針
システム監査人が、監査報告書の原案について被監査部門と意見交換を行う目的
システム監査人が監査報告書に記載する改善勧告に関する説明
システム監査報告書に記載された改善勧告に対する監査人の取組み
システム監査人が監査報告書に記載する事項のうち、監査人の業務範囲を逸脱するもの
監査意見
保証意見:コントロールが有効に機能していることを保証する意見表明
例
助言意見:欠陥の指摘と改善提言を行う意見表明
例
記載項目
監査の概要
監査の結論
その他の特記すべき事項
指摘事項
指摘事項の的確性
指摘事項の的確性を担保するために次のような点に留意する
監査目的への適合性
指摘事項の優先順位
指摘事項には優先順位を付けて、何が重要かについて被監査部門が判断できるようにしておく
考慮点
監査証拠による裏付け
被監査部門、関係部門との意見交換
関連法規、ガイドラインなどへの準拠性
記載上の留意点
改善勧告・補足事項
指摘事項
改善勧告
指摘事項の中から特に重要な事項を選択して改善を求める事項
緊急改善勧告
通常改善勧告
改善勧告の妥当性の確保
改善勧告の妥当性の確保のため次の点に留意する
システム監査報告書に記載された改善勧告に対して、被監査部門から提出された改善計画を経営者がITガバナンスの観点から評価する際の方針
補足事項の記載
システム監査の概要や監査意見のほかに、意見を表明する必要性を認めた事項を記載することができる
例
報告会の実施
意義
参加者
フォローアップ
意義
フォローアップの役割
フォローアップ方法
留意点
被監査部門の改善活動状況において、計画通りに行われているかどうかを定期的に確認する
業務改善そのものは被監査側が実施する
改善提案に対する監査対象部門の改善状況をモニタリングする
システム監査報告書に記載された改善勧告への取組みに対する監査人のフォローアップ
システム監査の改善指導(フォローアップ)において、被監査部門による改善が計画よりも遅れていることが判明したとき、システム監査人が採るべき行動